研究課題/領域番号 |
16740209
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
物性Ⅱ
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
堀田 知佐 青山学院大学, 理工学部, 助手 (50372909)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
2006年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2005年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2004年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 物性理論 / 計算物理 / 分子性固体 / 有機導体 / 電子相関 / 負の磁気抵抗 / 近藤格子模型 |
研究概要 |
最近、新しい1次元π-d系であるフタロシアニン系で負の巨大磁気抵抗が観測された。この系を念頭に、本研究では拡張近藤ハバードモデルを新しく提案し、強結合理論と数値計算に基づきその基底状態を明らかにし、バルク系でも安定な強磁性と電荷秩序が共存する相の存在を明らかにした。この相は電子の局在状態においても安定である点で、従来の電子の遍歴性を媒介とした二重交換系の強磁性とは異なっていることを示した。 一方、二次元異方的三角格子において、電荷秩序相近傍におけるフラストレーションに伴う電荷の融解現象を調べた。電荷の自由度のみを考慮したtV模型を適用し、飛び移り積分t、電子問クーロン相互作用Vの異方性の度合いが電子の局在性にどのような影響を及ぼすかを強結合理論と数値計算によって解析した。本モデルの強結合極限t=0は、古典イジング系に相当する。Vが等方的な場合、系の基底状態はマクロに縮退しており、その空間変調のパターンによって二つのグループに分けられる;特定の方向に2倍周期を持ったストライプ型の電荷秩序状態と、三副格子に分かれた状態である。ここに有限かつ十分小さなt<<Vを導入した際、後者がtの1次摂動の範囲で有意なエネルギー利得をもち、マクロな縮退を解いて新たな基底状態を形成することがわかった。この状態は、電荷のおよそ半分から2/3程度が等間隔にウィグナー結晶を形成し残りの電子が遍歴的な波動関数を形成する、電荷ギャップを持たない新しい量子液体状態である。この状態をその特徴的な形状からピンボール液体と呼ぶ。このピンボール液体は、三角形の異方性が導入されても有限のパラメタ領域で安定に存在するため、これまで提唱されてきたフラストレーション由来の様々な新しい量子状態と比べても普遍性の高い、より現実的なものであることが明らかになった。 これらの理論的結果を踏まえ、既存の実験をどのように理解できるか、またどのような実験を行えば、こうした新奇な量子状態を捉えることができるかなどを議論することが今後の課題である。
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