研究概要 |
古火星に想定される高圧の二酸化炭素大気の鉛直一次元大気熱収支・放射対流平衡モデルの開発は,多方向・高波長分解計算の厳密化,ならびに,散乱温室効果をもたらす二酸化炭素氷雲の鉛直プロファイル決定機構の導入を行い,ほぼ満足のできるレベルに到達した. このモデルを用いて,古火星大気の放射対流平衡構造・熱収支・二酸化氷雲による温室効果についての境界条件を変化させたパラメタスタディを進め,3気圧以上の大気圧と10^5-10^7kg^<-1>の範囲の凝結核混合比があれば,38億年前の火星において全球平均気温がH_2Oの融点を超える温暖な気候が実現されることが分かった. 一方,凝結核混合比が極めて小さい,あるいは大きい場合には,大気圧を増加させてゆくと,やがては地表面へのCO_2凝結が起こり,いわゆる大気崩壊が起こることがわかった.地球大気を参考にすると凝結核混合比は数桁の範囲で変動することが予想される.温室効果の強さが凝結核混合比に強く依存することは,火星の高クレーター密度地域の地形侵食が著しくは進んでいない,つまり温暖湿潤な気候の出現が間欠的であったと示唆されるここと調和する. 大気の地表面への凝結によって形成される二酸化炭素氷床の流動過程について,その数値計算のための流動則と涵養消耗過程についての基礎的な定式化を行った。完成した大気放射モデルから凝結核の挙動が重要なことが判明し,凝結核の移流を考慮した大気-氷床結合モデルが火星の気候変動の理解に有益であることが分かった.
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