研究概要 |
本研究の目的は含サフィリン片麻岩の原岩である高Mg堆積岩類の形成場・形成環境を明らかにし,体系化を試み地球環境の変遷を考察することある。本年度は以下の研究を行った. スコットランド,サウスハリス地城では,昨年度実施した岩石試料(30試料)の選定に基づき,蛍光X線全岩化学分析ならびにICP-MSによる希土類元素の測定を行った.塩基性グラニュライトに関してはMORBに類似したパターンが得られ従来の予測に調和的であることが明らかとなった.また,堆積岩由来の泥質グラニュライトについては採取されたエリアごとにHREEのパターンに相違が認められた.このことは,異なる形成場で全岩化学組成を異にする堆積岩類が形成したことを示唆しており,その詳細を今後検討していく.また,先行して研究を進めてきた含サフィリン・ザクロ石-斜方輝石グラニュライトについては,これまで数回,国際学術雑誌に投稿を行った.基本的な着想についてはおおむね受け入れられてはいるものの,1)酸素同位体組成の推定,2)同位体初生値 3)分析精度の向上などが指摘され,受理には至っていない。本研究期間内にはすべてを達成することは現時点で困難であり,今後それらに対して改善,追加実験を行う予定である. 高Mg堆積岩類の形成場・形成環境について体系化を試みるために,世界各地に露出する含サフィリン片麻岩類についての情報収集を行った.米国コロラド州に分布する含サフィリン片麻岩類については昨年度実施した野外調査をとりまとめ,全岩化学分析を実施した.さらにオーストラリア,アルンタ複合岩体ならびにブラジル,アナポリス岩体に産する含サフィリン片麻岩類の希土類元素のパターンも同時に比較したが,共通性は明らかにならず,これらがすべて熱水変質に由来するとは断言できない可能性が明らかになった.
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