研究概要 |
16年度には,ニュージーランド北島に分布する下部三畳系について,(1)岩石薄片による岩相の観察と記載,(2)一部試料については化学組成分析,そして(3)放散虫化石の抽出作業を行った.その結果,研究対象とした堆積物が遠洋〜半遠洋域の海洋性堆積物であることが追認され,ここから読みとることができる生物の消長と環境変化が,かつての大洋域のものであることを確認した. 17年度では,さらに調査範囲を広げ,得られる放散虫化石の層位分布について追加検証を行った.その結果,従来ペルム紀ー三畳紀境界で絶滅するとされていたグループの一部が三畳紀前期のスミシアン(Smithian)まで生存していたことを新たに見いだした. また,特に三畳紀型の放散虫化石について,電子顕微鏡を用いた内部など構造の観察を行うとともに,その記載を行った.保存状態が不十分であるものの,その構造は従来三畳紀中期に報告例の多いmonosegmented-nassellariaに非常に良く類似していることが確認され,これらが従来考えていたよりも早い時期に出現していたことがより明確になってきたと考えられる. 18年度では,国内の下部三畳系(Dienerian〜Spathian)について,ニュージーランドの結果を踏まえた視点で再度検討を試みた.西南日本の下部三畳系特にDienerian〜Smithianでは,ほとんど確認できず,西南日本のチャートが堆積していた場(低緯度)では,放散虫がまだ出現・回復していなかったことが確認できた.
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