研究概要 |
西太平洋の海底に存在するオントンジャワ海台は,火山の中では世界最大の噴出率を誇る巨大玄武岩地域である.この海台の調査のため,国際深海掘削計画のLeg192航海では掘削調査を行った.私は日本人の岩石学者としては唯一の乗船研究者としてLeg192に参加し,数十個の岩石を採取した.世界中から集まった乗船研究員の中で,私はマグマの分化作用に関する研究を任されている.そこで地下浅部(数〜20km)を想定した水に不飽和な系(<6wt%)での岩石溶融実験を行い,マグマ溜まり中の含水量および温度を決定することを目的とした. 平成16年度に購入したピストンシリンダ型高圧実験装置に今年度購入した加熱電源を繋ぎ,高温高圧実験を可能とした.実験温度・圧力は1160〜1200℃・500MPa(地下15kmの圧力に相当)の条件で行った.実験では酸素雰囲気の制御を行ため,三重カプセルを使用した.最も内側のカプセルには鉄-白金の合金を使用しこの中に岩石試料と水を入れ,中間部の白金チューブに挿入する.最も外側のカプセルにも白金を使用し,この中に酸素雰囲気の制御剤(Co-CoO)を入れて酸素雰囲気の制御を行った.また岡山大学固体地球センターの内熱式ガス圧装置を使用して低圧(200MPa;地下6kmの圧力)での溶融実験も行った.含水条件での実験試料中に含まれる斜長石中のAn量(=Ca/(Ca+Na))は無水の時に比べて増加し,マグネシウム量は減少することが明らかとなった.天然の岩石試料もAn量の多い斜長石はマグネシウム量が少ないという事実が判明しているため,高An量の斜長石は含水条件で晶出したことが明らかとなった.しかし実験試料中の斜長石のサイズが小さすぎたため,正確な化学分析が不可能であり,含水量の定量には至らなかった.
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