研究概要 |
我々の研究グループでは,理化学研究所加速器研究施設リニアック棟に既設の気体充填型反跳分離装置(GARIS)の焦点面にガスジェット搬送装置を設置し,物理的に前段分離された超重元素を気体または液体クロマトグラフなどの化学分析装置に供給する新しい元素分析システムの開発を進めている.今年度は,^<208>Pb(^<40>Ar,3n)^<245>Fmならびに^<238>U(^<22>Ne,5n)^<255>No反応によって生成するそれぞれ^<245>Fm(原子番号Z=100),^<255>No(Z=102)を用いて,本システムの性能評価を行った.GARISによる質量分離とガスジェット搬送によって,回転式アルファ線連続測定装置に検出された生成核は,目的核種とその娘核種のみであった.一方,ビームが標的チェンバー内を通過する従来のガスジェット搬送法では,ビーム強度の増大とともにガスジェット搬送効率が低下するという深刻な問題が生じていた.本研究では,2pμA(1.25×10^<13>/sec)を超える大強度ビームを用いて実験を行ったが,GARISによるビーム分離によって,80%を超える世界最高のガスジェット効率を記録した.以上の成果は,生成率が極めて小さくかつ短寿命の超重元素の化学研究において,(1)極低バックグラウンド下における超重元素化学実験,(2)ガスジェット搬送効率の増大ならびに安定化,(3)多彩な化学実験系の実現などの大きなブレイクスルーをもたらすことが期待される.
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