研究概要 |
本研究では、細胞膜が原形質(コロイド系)の水分量を巧みに調節する生命現象(浸透調節)に着目し、半透膜を用いた高速脱水重縮合システムの構築を試みた(高速化の駆動力として浸透圧を活用する世界で初めての試み)。まずはエマルション界面を活用した脱水操作の必要のない脱水重縮合法を確立し、その上で浸透圧と脱水重縮合挙動の相関を調べた。まず、界面活性剤一体型触媒としてp-ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)およびトリスドデシル硫酸スカンジウム[Sc(DS)_3]を用いて水中で重縮合を行った。各種ジカルボン酸とジオールを用いて80℃で48時間重合を行った([Diol]_0=[Dicarboxylic Acid]_0=1.1M)。16wt%のDBSAを用いて重縮合を行った結果、セバシン酸(SeA)と1,9-ノナンジオール(1,9-ND)および1,10-デカンジオール(1,10-DD)の水中脱水重縮合では、重量平均分子量(M_w)が7600および4100ポリエステルが合成できた(収率:99%)。ドデカン二酸(DDA)と1,9-NDでは、M_wが10100(M_w/M_n=2.0)のポリエステル得られ、その重合速度がモノマーの組み合わせに依存していることがわかると同時に、水中脱水重縮合でM_wが1万以上のポリエステルが合成できた初めての例となった。同量のSc(DS)_3を用いてDDAと1,9-NDの重縮合を行った場合もM_w 4000のポリエステルが得られ、ルイス酸型の触媒も有効であることがわかった。浸透圧の効果を調べるため、DDAと1,9-NDから得られたポリエステル(M_w=3800)エマルションを透析膜中に入れ、飽和食塩水中で80℃、5時間重縮合を行った。透析膜は収縮し浸透圧が働いていることは確認できたが、SEC測定により求めたMwにはほとんど変化が見られなかった(M_w=3300)。触媒濃度を変えて実験を行ったが、浸透圧による脱水の効果が重縮合に影響を与えている様子は確認できなかった。本研究で得られた基礎的な知見をもとに、条件の最適化を行うことで新たな脱水重縮合システムの確立を引き続き検討する。
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