研究課題/領域番号 |
16750112
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
機能物質化学
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研究機関 | 大阪電気通信大学 (2006) 東京大学 (2004-2005) |
研究代表者 |
藤原 絵美子 大阪電気通信大学, 学術フロンティア, PD (30361562)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
2006年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2005年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2004年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 有機導体 / 分子性固体 / 複合材料・物性 / ニッケル錯体 / セレン原子 / STF骨格 / ジチオラト配位子 / 結晶構造 / 伝導性 / 磁性 / モノアニオン錯体 / 金錯体 / 単一成分分子 / TTF骨格 |
研究概要 |
錯体の分子設計において、重カルコゲン原子を用いる事は、結晶中での分子間相互作用が強化され、良伝導性物質の構築が期待できる。TTF型ジチオラト金属錯体に基づく新たな伝導体の開発を目指し、単一成分分子金属である[Ni(dmdt)_2]に対してセレン原子を導入した[Ni(dmstfdt)_2]の合成を試みた。平成17年度、(^nBu_4N)[Ni(dmstfdt)_2]がモノアニオン錯体であるにも拘わらず室温付近で金属的伝導挙動を示す事、低温ではキャント磁性による計画強磁性体になることを報告し、拡張π共役系とセレン原子を有するこの種のモノアニオン錯体ではオンサイトクーロン斥力の減少と分子間相互作用の増大によって金属性の発現が可能である事を明らかにした。今回、カチオンサイズの小さな(Et_4N)[Ni(dmstfdt)_2]を合成し、その構造と伝導性を調べた。また、中性錯体[Ni(dmstfdt)_2]の伝導性と磁性を調べた。 (Et_4N)[Ni(dmstfdt)2]の微小な紫色板状晶と中性錯体[Ni(dmstfdt)_2]の黒色微結晶は、Et_4N PF_6を含むMeCN溶液中、ジアニオン錯体(^nBu_4N)_2[Ni(dmstfdt)_2]を定電流電解法(0.1μA)を用いて40℃で電解酸化する事により得られた。モノアニオン錯体について単結晶X線構造解析を行った。カルコゲン接触は二種類のS…Se接触がみられるのみで、分予横方向に一次元的に発達している事が分かった。拡張Huckel法を用いた重なり積分値の計算では、カルコゲン接触がみられた方向よりもむしろ、垂直な面内で大きな重なり積分値が与えられ、二次元的な分子間相互作用があることが推定された。この錯体はモノアニオン錯体としては比較的高い室温伝導度(0.076Scm^<-1>)を示したが、その値は^nBu_4N錯体の場合(0.14Scm^<-1>)に較べ低い値となっている。抵抗の温度依存性は活性化エネルギーが16meVの半導体的な挙動であった。 一方、中性錯体[Ni(dmstfdt)_2]は元素分析により同定した。粉末X線回折実験により[Ni(dmdt)_2]の場合とは異なる結晶構造を有する事が分かった。この錯体の加圧成形試料は165Scm^<-1>と大きな室温伝導度を示した。活性化エネルギーは10meVと小さく、低温部においてもこの錯体は高伝導性(σ(4.2K)/σ(RT)=ca.1/2)を示す事が分かった。10kOeの磁場中で測定した静磁化率はパウリ常磁性的な温度依存性を示した。以上の結果から、この中性錯体は本質的には金属であると考えられる。
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