研究概要 |
有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は,次世代のフルカラーフラットパネルディスプレイとしてだけでなく,フレキシブル光源,さらには有機レーザーなどの光源として応用可能なことから非常に注目されている。これまでに開発されてきたアモルファス分子に対して,最近,光学異方性を有する発光性液晶を用いて偏光発光可能な新しい有機EL素子が開発された。偏光発光有機EL素子は,液晶自身の配向に基づく偏光発光が得られるため,偏光フィルターを介さない新しい薄膜偏光光源として非常に有望であるが,発光性液晶の分子間相互作用が大きく発光特性に乏しいため,光源として用いるには輝度,効率が十分でない。本研究では,適度な分子間相互作用を有する液晶の設計・合成と高性能偏光発光EL素子の開発を行うことを目的とする。 これまでに,リン光発光EL素子用の両極輸送性ホスト材料としてカルバゾールとオキサジアゾール部位を有する化合物を開発している。本年度はリン光性液晶化合物として,フェニルピリジンと長鎖アルキル基を配位子とするリン光性Pt錯体を合成した。合成したPt錯体(ppyPt(11acac))は,溶液中で強い青色の発光を示した。昨年度,開発した液晶高分子をホストに今年度開発したPt錯体を色素として用いたEL素子を作製した。作製した素子に対して,電圧を印加することにより黄白色の発光が観測された。色素の濃度の変化から,発光はホストと色素の相互作用により生じるエキシプレックス発光に基づくものと考えた。また,この発光は配向処理方向と垂直な方向に発光の遷移モーメントを有することがわかった。以上のことから,偏光燐光発光する素子を開発することに成功した。
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