研究概要 |
膨潤性フッ素雲母をホスト結晶として用い,金属Al溶解法で調製した多核ヒドロキソAl溶液との反応により,陽イオン交換能を有するナノ多孔性アルミナ架橋フッ素雲母を合成すること,及びそのイオン交換能を利用してナノ空間を修飾した複合体を作製することを目的として研究を行い,以下の知見を得た. 前年度のNa型フッ素四ケイ素雲母をホスト結晶とした架橋体の層間ナノ空間での還元に関する知見に引き続き,架橋体の層間ナノ空間でin situ還元したCu及びNiは,i)層間域に存在する数nmのクラスター,ii)層間を押し広げて存在する>200nmの微粒子及びiii)外表面に析出した>0.5μmの球状微粒子として存在することを見出した.それらの量比は反応時間や雲母フレークのサイズに依存し,特にi及びiiはナノ空間を修飾する位置に存在することを指摘した.生成した金属/架橋フッ素雲母系ナノコンポジットは架橋体のミクロ孔特性を維持することが判明した.さらに,グリセリンまたはトリエチレングリコールを用いると層間ナノ空間でのCo^<2+>→Co^0の還元が可能であることを見出した.また,テニオライト系フッ素雲母を遊星ボールミル粉砕したホスト結晶からミクロ孔とメソ孔を有する比表面積及び細孔容積の大きい架橋体が生成し,ナノ複合多孔体として有望であることを指摘した.同じくテニオライト系フッ素雲母を用い層間挿入反応温度を変化させると,底面間隔及び細孔特性の異なるジルコニア架橋体が生成することを明らかにし,ナノ複合多孔体としての有望性を指摘した.なお,架橋体の酸処理により層間ミクロ孔をメソ孔化させることが可能なことも見出し,この方法を新たなメソ多孔体の作製法として発表した. 以上を通じ,Na型フッ素四ケイ素雲母及びテニオライト系フッ素雲母をホスト結晶とした多機能ミクロ多孔体の合成及び層間ナノ空間の修飾に関する体系的知見を得た.
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