研究概要 |
動的非対称の大きな高分子によるブロック共重合体において、無秩序状態(相溶状態)におけるガラス転移挙動の協同運動性やその運動セグメントサイズに関して研究した。おもに電子スピン共鳴法(ESR)による高分子のガラス転移のセグメントサイズに関する知見を得た。結晶性単一高分子は、結晶などの存在により、非晶部においても構造は不均一であり、それゆえ動的不均一は存在する。この非晶部の分子運動性を評価した。結晶性高分子においても、ガラス転移温度は高分子の屈曲性の指標であるkuhnを基準にした局所体積中の互いの組成に支配されことがわかった(Macromolecules 38,4737,2005)。また選択的ESRスピンラベル法を用い,ミクロ相分離構造を形成するブロック共重合体(ポリスチレン(PS)-b-ポリアクリル酸メチル)の界面部位の分子運動(擬似的な無秩序状態)を観察した。さらに一成分にのみ溶解する高分子(PS、ポリシクロヘキシルメタクリレート(PCHMA)がPS相に溶解)をブレンドした場合の、界面の動的不均一の変化にも注目した。ブレンドによりPS相のガラス転移温度は変化するが、PMA相のガラス転移温度は普遍であり、片方の相のみに相溶化したことを確認した。界面の運動転移転は両相の中間的な温度であることがわかっている。PS相のガラス転移温度の減少は、界面の分子運動転移転の減少を予測させるが、実際はブレンド比率に依存しなかった。これは一般に界面厚みは数nmといわれ、本研究でのESR法で観測できる運動領域はまさに数nmオーダーでありほぼ一致することによると考えた。つまり検出できる界面領域へのPS鎖およびPCHMA鎖の進入が起こらないことを意味すると結論付けた(J.Phys.Chem.110,4073,2006)。
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