研究概要 |
コアにトリフェニルアミン基を有する金属集積機能を持つフェニルアゾメチン(TP-DPA)デンドリマーを新規合成、物性の検討から各世代のデンドリマーにおける金属イオンとの段階的な錯形成挙動が明らかにした。これらのデンドリマーは優れた耐熱性および溶解性を有しながらその特徴的な球状構造であるため、簡便な方法により作製可能な電子デバイス用の新しい有機ナノ材料として適している。 そこで本研究では、TP-DPAデンドリマーを色素増感太陽電池(Dye sensitized solar cell, DSSC)のキャリアー輸送を促進させる添加剤(Mediator)として用いてその素子特性について検討した。TP-DPAデンドリマーは、中心のアミン基を介してキャリアーの受け渡しがより効率よく可能であると考えられ、その結果半導体電極であるTiO_2に注入された電子がI_3^-への逆電子移動反応が抑制されると考えられる。TP-DPAG5を色素が吸着されたTiO_2半導体電極上にキャスト法によりコーティングして素子を作製して素子特性について検討を行った。AM1.5の光を照射時の測定結果、デンドリマーを用いていない一般素子の場合は、Vocは703mV、Jscは19.5mA程度であり、変換効率は7.90%(フィールファクター、FF=0.58)にとどまった。一方、デンドリマーを利用することにより素子のJscは若干減少(17.9mA)したもののVocは829mVまで向上でき素子の変換効率は9.11%(FF=0.63)まで増加した。さらに、金属錯形成したデンドリマー(SnCl_2@TPA-DPA G5)を用いることによりVocはさらに843mVまで向上し、Jscにおいても18.8mAと高い値を示すことが確認され、素子の変換効率は9.78%(FF=0.63)まで向上させることに成功し従来素子の最高値(10%)と同等の性能が発現でき目標値を達成した。これは、前述したようにTP-DPAデンドリマーによってTiO_2に注入された電子のI_3^-への逆電子移動が抑制されたためであると考えられる。 以上のように、精密金属集積能を有するTP-DPAデンドリマーがエネルギー変換素子に極めて有効であることを実証できたので本研究課題の早期終了が可能となった。
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