本研究の目的は、原子間力顕微鏡法(AFM)を用いて磁性材料表面(FeO(111)表面)の構造を原子レベルで明らかにし、そこに発現する磁性と構造との関係を明らかにすることである。 昨年度までFeO(111)表面の基板となるFe(110)清浄表面を作成し、AFMによる観察を行い、原子レベルで平坦なFe(110)表面を作成することができた。今年度は超高真空下でFe(110)面を酸化し、その条件の最適化行った。さらにAFMによりFeO(111)表面構造の観察を行い、磁性発現機構の解明を試みた。 1.FeO(111)表面の作成 酸化条件(基板温度300-500度、蒸着量1000-10000L)を変えて最適化を行った。その結果、基板温度300度、蒸着量3600Lで低速電子回折(LEED)のFeO(111)バルク構造を示す1x1スポットやその表面超構造と考えられている2x2スポットが観察された。また、オージェ電子分光(AES)から推定される酸素被服率も過去の文献と一致した。これにより、従来LEEDやAES観察により研究されたFeO(111)薄膜表面と同等の表面が作成できたと考えられる。 2.FeO(111)表面のAFM観察 FeO(111)表面のAFM観察では平坦な表面は得られなかった。画像には数nmオーダーの起伏が多く、FeO(111)薄膜表面は比較的不安定な面であることが分かった。従来のLEED、AESによるFeO(111)表面の研究では強磁性が発現していたため、これはFeO薄膜の数nmオーダーの起伏が作る他の面の露出が原因である可能性もあることがわかった。 今後FeO(111)表面の更なる清浄化方法を検討し、磁場あるなしでAFM観察を行い、表面構造と磁性との関係について研究していく。
|