研究概要 |
平成17年度では,非線形光学結晶を用いたテラヘルツ波(以後,THz波と記す),および,中赤外光の発生を目的としている.まず,励起光源,および,検出光源として使用するフェムト秒レーザー(昨年度に構築したレーザーを指す.主な仕様として,パルス幅:45fs,パルスエネルギー:7.8nJが得られている)のピーク強度を増大させる事を目的にレーザー共振器の改良を行った.改良方法として,マルチパスキャビティ(Multiple-Pass Cavity,以後,MPCと記す)を共振器内に導入して共振器長を延長する方法を採用し,ABCD行列を用いて最適な共振器構成を検討し,MPCの凹面ミラーの曲率半径を2m,反射回数を5回,ミラー間距離を82.4cmと設計して,共振器を構築した.その結果,繰り返し周期:13.5MHzでのカーレンズモード同期発振に成功し,パルス幅が40fsで,37.0nJのパルスエネルギーを安定に得る事に成功した.この結果,昨年度に比べて約5倍のピーク強度の増大に成功した.また,レーザーの改良と平行して,非線形光学結晶を用いたテラヘルツ波発生の偏光制御について理論的に検討した.そして,放射素子として,(111)面カットのZnTe結晶を選択し,ボロメータと(平成16度に作製した)ワイヤーグリッド偏光子を用いてTHz波放射強度と偏光特性について調べた.その結果,直線偏光のフェムト秒レーザーで励起する場合では,放射されるTHz波強度は一定で,偏光状態は直線偏光であることを確認した.また,その偏光方向はZnTe結晶軸と励起レーザーの偏光方向にのみ依存する結果を確認することができた.この実験結果により,放射されるTHz波,および,中赤外光の偏光方向を偏光子を用いずに制御できることを確認した.
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