研究概要 |
本研究は,実際の交通事故を模擬した負荷に対する膝関節靭帯の耐性を明らかにし,歩行者下肢傷害シミュレーションモデルの傷害再現精度の向上を図ることを目的とする. 平成17年度では,前年度の成果を受け,膝関節有限要素モデルの作成手法および近似手法が傷害予測解析結果に与える影響を検討した.具体的にはウサギ膝関節のCT画像に基づく実形状骨モデルを用い,骨の力学特性の近似,靭帯要素のモデル化精度を種々に変え,ウサギ膝関節せん断実験結果の再現精度を比較した. その結果,骨要素の材料特性を骨密度分布を考慮して設定したモデルと一様な力学特性を与えたモデルでは骨折の様態が異なることがわかった.一様な力学特性の骨モデルによる傷害予測結果は膝関節せん断実験結果と大きく異なり,骨密度分布を考慮したモデルの方が実験結果に近い予測をした.靭帯損傷に関しては骨の材料特性の設定によらず同様の予測結果を示した.一方,骨折発生は骨モデルの力学特性のみならず,骨要素に荷重を伝達する後十字靭帯の特性に依存することがわかった.したがって靭帯要素の高精度な再現が高精度な骨折予測に不可欠であるといえる.さらに軟組織モデル構築方法が解析精度に及ぼす影響を検討した結果,Shell要素で作成した靭帯はSolid要素で作成したものよりも破断しにくい傾向がみられた.また,靭帯Solid要素に関しては要素の分割数を多くすることにより破断変位が大きくなり,靭帯の異常な変形や傷害の発生を押さえられることがわかった.
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