研究概要 |
発電用高効率ガスタービンの構成部材である動静翼,燃焼器などでは,その寿命延伸,耐熱温度の向上のために遮熱コーティングが不可欠であり,熱疲労に関連した遮熱コーティングの寿命・余寿命評価,損傷評価が重要となっている.熱疲労に伴う損傷挙動を定量的に評価し寿命・余寿命予測モデルを確立するためには,熱疲労に伴う残存密着強度の変化挙動を定量的に把握する必要性がある. そこで本研究では,遮熱コーティングの熱疲労損傷メカニズムを解明することを目的として,局所界面強度評価手法の開発と,それによる熱疲労損傷の評価を試みた. まず,試験が容易な皮膜表面からダイヤモンド圧子を押込む手法を検討した.しかし,皮膜表面からの押し込み試験では,1)界面剥離を発生させるには皮膜の膜厚に制限があり遮熱コーティングなどの厚膜皮膜にはそのままでは適用できない,2)界面のき裂長さと表面のき裂長さが異なるため界面強度特性値の評価に不可欠な界面き裂長さの測定が困難である,などの問題から界面強度の特性値を得る方法としては実用的ではなかった. そこで,断面から界面にダイヤモンド圧子を押込む手法による密着強度評価を試みた.その結果,本手法により界面き裂が容易に発生させられること,得られた界面じん性値の製均値は曲げ試験で評価したマクロ的な界面強度にほぼ等しく,本手法の有効性が確認された. 有効性が確認できたィンデンテーション被膜密着強度評価手法により,熱サイクル負荷に伴う残存密着強度の変化挙動を調査した.その結果,密着強度はある程度の熱サイクル数まではほとんど変化しないが,その後,急激に減少した.断面組織観察の結果,熱サイクルに伴い熱生成酸化物の成長とそれに伴う微小き裂が発生し,これが残存密着強度の低下に関与しているものと考えられた.
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