研究概要 |
高分子材料は熱や光,酸素,力学的な負荷等の外乱の影響を受けて劣化することが知られている.このとき外乱の入力方向と外乱の影響の材料内部への拡散の挙動が重要な要因となる.高分子材料について外乱と劣化の関係は,外乱による分子鎖の切断や架橋,副次的な反応等が複雑に発現するため,一義的な関係として表すことは難しい.これまでの研究では力学的な負荷については,一方向負荷,繰り返し負荷等の違いによって,材料全体にわたって一様もしくは一部のみ外乱の影響を受けることを明らかにした.その結果,劣化の状態について,分子鎖の状態と劣化の分布を正確に把握することで,精度よく高分子材料の劣化状態を評価できることがわかった. 本助成金ではポリカーボネートのフィルムを作成し,このフィルムを重ね合わせた重畳試験片を用いて,劣化した高分子材料を詳細に調べる方法を開発した.フィルムの重ね合わせは界面への酸素などの劣化因子の拡散が問題になるが,これらをシールする治具を新たに開発してクリアした.この重畳試験片法により,第1年度に表面から負荷される劣化の影響による深さに限度があることを明らかにした.第2年度は,さらに劣化極限深さを詳細に調べ,高分子材料の劣化状態を評価(予測)した.その結果,劣化因子と劣化形態には,化学反応に起因する一定の関係があり,速度論によって現せることを明らかにした. また,劣化因子をトリガーとして,いわゆる抗体が機能するシステムを提案し,液体高分子材料内で,その機能を確認でき,自己修復の可能性を示唆することができた.
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