研究概要 |
本研究では,せん断加工の微細化を阻んでいる要因として「金型の嵌合」と「破断分離」を排除することを考え,塑性変形により輪郭に沿って最薄部を与え,その部位をエッチングにより除去して分離を達成する「エッチングを援用した微細せん断法」を提案し,低コストかつ高精度な微細せん断技術の確立を目指して基礎的な検討を行った.板厚100μmのベリリウム銅箔を用い直径4mmの円形輪郭の分離を対象として,塑性変形の与え方とエッチング時のレジストによるマスキング方法を変えて実験を行った結果,いずれの条件においてもバリ,破断面のない良好な分離面が得られ本方法の有用性が確認された.しかし,半せん断加工により最薄部を与えた試片では通常のエッチングよりも分離までの時間は短くなるが,溶解速度は遅くなるという現象が認められた.本年度はその改善と原因究明のため,浸漬方法および塑性変形部の形状と塑性ひずみがエッチング特性に及ぼす影響について検討を行った. まず,最薄部の溶解の様子についてレーザー顕微鏡により時間毎の形状変化を詳細に観察した.その結果,半せん断による段差の凹部の溶け残りが増えていることが分かり,溶液が段差の奥まで届かずよどみが生じて速度が低下していることがわかった.これを解消するために振幅1mmの音波振動を付加したところ,凹部の溶け残りが減少し多少ではあるが速度低下が改善され,今後,振幅や振動数を最適化することで更なる改善の可能性が見いだされた. 一方,塑性ひずみの与え方に関して,半せん断ではなく帯板を一様に圧縮した試片をエッチングした場合には圧縮ひずみ量によらずエッチング速度は変化しなかった.また,板の端を局所的に圧縮した場合には,圧縮部と非圧縮部の境界付近で溶解が進むことがわかり,エッチング速度は塑性ひずみの大きさではなくひずみの種類(引張,圧縮)や勾配によって変化することが推察された.
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