研究概要 |
(1)無潤滑・微量潤滑塑性加工の摩擦・焼付き評価実験 無潤滑・微量潤滑塑性加工の実用化を目指して,前年度行ったリング圧縮試験と比較して実加工に近い厳しい摩擦試験としてテーパ付プラグ通し試験を行い,実加工で大きな問題となる凝着,焼付きについて調べた. (1.1)アルミニウム合金の極微量潤滑塑性加工における焼付き評価 テーパ付プラグに膜厚5μm以下の微量の潤滑油を塗布し,アルミニウム合金A5052試験片に押し通す際の潤滑油量と焼付き発生位置,加工荷重との関係を調べた.目視による焼付き評価では,潤滑油量によって焼付き発生位置が変化し,微量潤滑下でのテーパ付プラグ通し試験の有効性を示すことができた.特に穴面積拡大率17%以下での加工では,膜厚2μm程度の微量の潤滑油で焼付きを防止できた.今後,試験中の加工荷重の増加割合,試験片内径面表面粗さ,有限要素解析等の組合わせによる定量的な焼付き評価方法を確立する予定である. (1.2)マグネシウム合金の無潤滑塑性加工における表面被覆工具の効果 試験片にマグネシウム合金AZ31B(Mg-3%Al-1%Zn),テーパ付プラグ(超硬合金製)にTiAlN,DLC(Diamond-Like Carbon)硬質物を被膜した被覆プラグ工具を用いて,無潤滑でテーパ付プラグ通し試験を行った ・DLC被覆工具を使用することにより,マグネシウム合金の工具表面への凝着量を大幅に減らすことができた ・前年度のリング圧縮試験結果と合わせて,マグネシウム合金の無潤滑塑性加工においては,工具表面へのDLC被膜処理は摩擦係数,工具への凝着量を低減でき,非常に有効である.ただし,高接触面圧,高すべり量を課す塑性加工では,DLC被膜に剥離が生じるため,加工面圧には細心の注意を要することも分かった. (2)無潤滑塑性加工の摩擦機構の考察 前年度取り組んだリング圧縮試験,今年度取り組んだテーパ付プラグ通し試験における加工形態を詳細に調べた.両試験法での工具-試験片間の接触圧力,すべり量の違いについて有限要素解析を行い,上記の実験結果と合わせて,無潤滑塑性加工での摩擦機構について力学的に考察した.
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