研究概要 |
5軸制御マシニングセンタにおいて,所望の加工精度を得るために必要な幾何偏差の許容値を明らかにするために,昨年度に引き続き,次の2項目について研究を実施した. (1)幾何偏差と工具先端の位置誤差との関係の解明 テーブル旋回形,主軸頭旋回形および主軸頭テーブル旋回形の運動モデルとポストプロセッサとを作成し,幾何偏差が存在した場合の工具先端の位置誤差を調べた.その結果,角度偏差が存在した場合には,構造形態によって,工具先端の位置誤差に影響を及ぼす因子が異なり,位置偏差が存在した場合には,構造形態に関わらず,工具先端の位置に偏差量だけが影響を及ぼすことがわかった. (2)幾何偏差の補正方法の検討 実機に付属するCAMシステムを用いて,5軸制御マシニングセンタに存在する幾何偏差の影響を補正する方法について検討した.具体的には,ユーザ座標系とCAMで入力できる補正パラメータとを任意に設定し,加工範囲全体において工具先端の位置誤差を補正できるのかを調べた.テーブル旋回形では,工具先端の位置誤差が加工位置によって異なるため,加工範囲全体を補正することができず,主軸頭旋回形でも,補正ができないことがわかった.主軸頭テーブル旋回形では,主軸端から工具先端までの距離を一定に保てば,工具先端の位置誤差を減少させられることがわかった.考案した補正方法が有効でないテーブル旋回形と主軸頭旋回形については,偏差量と工具先端の位置誤差との関係を明らかにし,幾何偏差の許容値を決定するための基礎資料を示した.
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