研究概要 |
本研究では,小型精密機器の健全性評価のための摩擦音による接触状態診断システムを開発するために実際の機械でより一般的な平面対平面の接触における接触面の表面粗さと摩擦音の関係を明らかにした. 本研究の特徴は,2つのディスクを手で擦るという非常に単純なテストの導入と,固有振動数が可聴域よりも高い試験片を導入した点にある.手をこすることにより再現性が良く,機械を用いた実験と比較しバックグラウンドノイズのない正確な実験が可能であることを確認した. 研究の結果,摩擦音の周波数スペクトルには種々のピークがあり,一番低周波のピークは,表面がなめらかな時高周波数に移動し,表面が粗い時は時低周波数に移動することが明らかにされた.この摩擦音のピーク周波数と表面粗さには,F=A×R^Bのpower lawの形で表すことができることを明らかにした.ここで,Fは周波数のピーク,Rは表面粗さ,Aは係数,Bはpower係数を表す.AとBは,実験的に決定される. 測定されたピーク周波数の解析のために,接触面の剛性を想定したばねで結合された2物体の単純な1-自由度力学モデルを提案した.ここで,接触面剛性をモデル化するため,粗い表面にはグリーンウッド-ウィリアムソン接触モデルを導入した.このモデルにより,表面粗さにより変化する接触面剛性によりシステムの固有周波数が変化することが明らかにされた.また,計算で求められる固有周波数は,実験で得られた摩擦音のピーク周波数と相関を有することが明らかにされた. この結果にもとづき,摩擦音のピーク周波数及びその変化により,接触面剛性(表面粗さ)及びその変化を診断することが可能であることを実証した.
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