研究概要 |
平成17年度は,前年度に製作した実験装置(モデルワインダ,測定用ボビン)を用い,伸縮性の高いポリウレタン繊維「スパンデックス」を試料として,実際に巻糸体を形成しながら糸層の半径方向変位量・ひずみの測定を中心に研究を行った. 巻糸体を形成する過程で,内層の糸層の上に外層の糸が累積することで糸層の変位が発生する.これを,透明なアクリル製のフランジを持つボビンに巻糸体を形成し,デジタルカメラで撮影する方法で測定した.その結果,スパンデックス巻糸体では,糸層は外層の糸による圧縮力を受けて巻糸体の中心方向に変位しており,糸層のひずみが約10%あることがわかった.一方ナイロン巻糸体では,糸層のひずみは数%と小さいことがわかった, また,巻糸体のフランジに対する荷重は,ナイロンやポリエステルでは無視できるほど小さいとされていたが,前年度の研究により,スパンデックスを巻き取った場合には,かなり大きくなることがわかったため,フランジ面に加わる圧縮荷重の分布を測定するボビンを製作し測定を行った.その結果,フランジ圧縮力はドラフト比が大きいほど大きくなり,糸層の累積に伴い直線的に増加し,圧縮力の分布の状態は外層から内層へかけて直線的に増加していることがわかった.スパンデックス糸層のひずみが内層ほど大きくなったことと併せて考察すれば,外側の糸層が巻糸体の半径方向に圧縮する力が内側の糸層に累積して伝わり,フランジ方向へ圧縮する力となったと考えられる.これらの結果をもとに,有限要素法解析を行ったところ,ボビンの最大応力の発生位置が,フランジの付け根付近であり,実際のボビンの破壊事例とほぼ合致した. スパンデックスを用いて巻糸体を形成する場合は,ボビンへの力の加わり方がナイロンやポリエステルとまったく異なるため,これを考慮した巻糸体形成条件の設定が必要である.
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