研究概要 |
低コストの宇宙輸送システムの要求が高まる中,完全再使用型宇宙往還機の推進機関用ノズルとしてエアロスパイクノズルの実用化が期待されている.現在ロケット推進用に用いられているベル型ノズルと異なり,エアロスパイクノズルでは常に外気とつり合うように膨張するため,単一のノズルで低高度から高高度まで高い性能を維持できる特性を持つ.本研究では,NO-LIF法(レーザー誘起蛍光法)による可視化技術を用いて,リニア型エアロスパイクノズルの膨張流の任意断面における可視化画像を測定するとともに,気体流と干渉する固体表面の圧力分布計測が可能な感圧塗料(PSP)による圧力計測法を用いて,ノズル噴射時におけるスパイク表面の二次元的かつ連続的な圧力分布測定を行い,それらの結果を解析することによって複雑な噴流構造を実験的に解析した. 二次元流を仮定して設計されるリニア型エアロスパイクノズルでは,設計で考慮しない側方への膨張が推力損失をもたらす可能性があるため,側方への膨張を抑制するためにノズルに側壁を設置する手法が有効である.本研究では側壁の有効性を検証するため,側壁の有無で異なる噴流構造およびスパイク表面圧力分布を実験により比較した.その結果,側壁により側方への膨張が抑制され,設計通りの噴流構造が得られたことを示すとともに,スパイク表面上に働く圧力も側壁のないノズルに比べて大きくなるため,側壁の設置により推力増加が見込まれることを明らかにした. さらに,側壁付きノズルの流れ場の解析結果から,エアロスパイクノズルの特徴である圧力比の変化に伴う噴流の変化を示し,特に設計圧力比未満の圧力比条件においてスパイク表面全域にわたって圧力が大気圧より低くならず,従来のベル型ノズルで生ずるような低圧力比条件における過膨張およびそれに伴う噴流の剥離が生じないことを明らかにすることで,本ノズルの有用性を示した.
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