| 研究概要 |
本研究は,乱流渦と壁面の直接的な干渉(ブロック効果)による乱流構造の変化を明らかにし,二次流れ発生機構を明らかにすることを目的としている.今年度は,まず,昨年度のRapid Distortion Theory (RDT)に基づく線形理論解析を発展させ,壁面ブロック効果に及ぼすレイノルズ数の影響を明らかにするとともに,波状壁面上で発生する二次流れの理論予測も行った.さらに,昨年度の研究で開発したフォーシング(エネルギー加振)手法を用いて定常的な等方性および軸対称非等方性乱流場を計算空間内に発生させ,その中に壁面を挿入した場合の乱流統計量の変化を三次元直接数値計算(DNS)により計算した.その結果,レイノルズ数が低い場合には擬定常状態において壁面近傍における水平方向および鉛直方向の速度変動強度の減少が顕著になること,粘性の影響が小さい範囲ではスプラット効果がより顕著に起こること,速度変動強度は時間に依存して変化するのに対して,レイノルズ応力分布は時間的にほとんど変化しないことなどが明らかになった.また,本研究で開発したDNSにより得られた結果は,RDTによる初期応答結果および過去の実験結果と非常によく一致した.さらに,昨年度に作成した振動格子乱流水槽内を用いて,壁面近傍の乱流統計量の計測を行った結果,壁面近傍の乱流統計量は,疑定常状態に対するDNS結果とよく一致した.また,格子の振動数が大きく非常に強い乱流を発生させた場合には,非等方性乱流の壁面ブロック効果によって壁面近傍で平均流が発生する様子が観察された.この結果は,非等方性乱流に対する昨年度のRDT結果を裏付けるものである.本課題研究によってRDTに基づく線形理論解析,三次元直接数値計算および室内実験を用いることにより,乱流渦と壁面の直接的な干渉(ブロック効果)による乱流構造の変化および二次流れ発生機構を明らかにすることができ,当初の研究目的は達成された.壁面シアーのある壁面上境界層乱流場に及ぼす壁面ブロック効果,浮力の影響のある境界層乱流場での壁面ブロック効果による乱流構造の変化と二次流れ発生機構の解明などが今後の研究課題として考えられ,将来明らかにしていきたい.
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