研究概要 |
今年度は,自己相似性となる粗面乱流境界層の壁近傍構造と境界層大渦構造との関係を調査するため,圧力変動プローブの製作と圧力変動および熱線プローブを用いた圧力速度同時計測を行った. 製作された圧力変動プローブの計測結果の妥当性は,以下に示す方法により検証した.(1)スピーカーを用いて,任意の周波数の音圧を生じさせ,圧力変動プローブで測定される信号の平均量が発生させた音圧とほぼ一致することを確認する.(2)二次元チャネル流の壁面圧力変動を本プローブで計測して圧力変動強度を求め,他研究者による実験結果および数値計算結果との比較を行う.これらより,本圧力変動プローブは良好に変動圧力の計測が可能であることを確認した. 圧力速度同時計測は,圧力変動プローブを粗さ要素溝底面部(溝内部の平均流線が溝底面部と平行となる位置)に,一方X形熱線プローブをその上方位置に設置して行った.ポアソン方程式を基礎にすると,空間任意の点の圧力変動は,速度の空間微分値の2乗値(渦度や散逸に関係)の空間積分値として表現される.そこで,本研究では溝底面部の圧力変動に対して,多層構造である乱流境界層のどの領域の渦構造からの寄与が大きいかを圧力変動と変動速度勾配の空間相関値から調べてみた.その結果,外層の渦構造との相関はほとんど無視でき,圧力変動には内層の壁近傍領域との関係が強いことが示された.さらに,その相関値は負の値であり,内層領域で強い渦度が生じるとき,変動圧力は負の変動が生じると考えられる.また,壁面近傍溝内部領域の流れの様相を把握するため水槽による可視化観察を二次元矩形粗面流で行った.溝内部では渦の形成・崩壊・放出が生じており,その流れの様相変化の周波数を本実験の条件に当てはめると約100Hz程度であった.そこで,変動圧力のスペクトル解析を行うと,圧力変動強度に対して100Hz付近の周波数からの寄与が大きいことが明らかになった.
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