研究概要 |
本研究は,層流・乱流に依存しない抵抗減少手法を得ることを目的とし,柔軟壁による抵抗減少効果および微細構造による抵抗減少効果の二方向からアプローチを行った.研究対象とした流れ場は,内部流である矩形管内流れと外部流の平板上乱流境界層内流れである.研究は実験を中心に行い,それぞれに対して抵抗減少効果およびそのメカニズムを明らかにすることが出来た.その結果は,以下のようにまとめられる. (1)幅約10μm,深さ約10μmの溝にはっ水塗料を付した壁面を一辺に持つ正方形管の150<Re<770の範囲において,その管摩擦係数が最大約13%低減する抵抗減少効果を得た.その効果は壁面にはっ水性と微細構造を同時に与えることで発揮されることが判った.また,抵抗減少効果を示す壁面では流動下において気液界面を形成する. (2)長さ200mm,幅150mm,厚さ10mm,密度1200kg/m^3,ヤング率1.5MPaの柔軟壁を用いて乱流域において約8%の抵抗減少効果を得た.このとき壁面近傍の主流方向及び壁面方向乱れ強さはともに減少し,レイノルズ応力は境界層内全域で小さくなること,および乱流流れで特徴的である,スイープ,イジェクション,低速ストリークの発生頻度が減少することを詳細に明らかにした.また,圧力変動が全体的に小さくなり,そのピーク周波数のスペクトルが大きく減少することが判った. 今後は,(2)の柔軟壁に(1)の構造を付し,その表面にはっ水塗料をコーティングすることで,層流・乱流両域の広範囲の流れに対し抵抗減少効果を有する新しい壁面を創生することが可能であると考えられる.
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