| 研究概要 |
薄板をその長辺を鉛直方向に平行な姿勢から自由落下させると,薄板はしばらくすると規則的な回転運動に至り,翼の中心は斜め下方にほぼ直線的に一定回転で運動する現象が生じることがある。この現象は自動回転運動と呼ばれ,落下物体の形状や慣性モーメント等の条件がそろえば観察できる。自動回転運動している薄板は簡単に観察できる現象にもかかわらず、薄板からの渦放出と平板の回転運動に起因して、非定常的な流体力が作用する。そのため、その非定常流体力のメカニズムの解明することで、昆虫等の羽ばたき運動での揚力発生メカニズムの解明の一助になると考えられる。今回の研究では,まず,平板の自動回転運動の落下速度と回転数を一定と仮定した場合の平板周りの流れ場を離散渦法を用いて解析した。計算結果はPIVに可視化実験結果と定性的に一致した。また、計算結果より平板に作用する非定常流体力を算出し,平板からの渦放出と平板からの回転運動が及ぼす影響について調べた。その結果、θ=0°では回転運動が流体力に及ぼす影響が大きく、ポテンシャル理論の結果とほぼ一致し、それ以外の領域では渦放出の流体力への影響が大きくなることが確認された。
また、実際の自動回転運動の落下挙動を再現するために,計算コードに平板に作用する流体力やモーメントを外力とする運動方程式を加え,平板の移動及び回転を取り扱えるようにした。計算結果は高速度カメラによる映像を画像処理した結果と比較し良い一致を得た。数値計算結果を回転数を一定にした場合の計算結果と比較し,平板の運動による流れ場や平板に作用する流体力の変化が,再び平板の運動に影響を与えるようなフィードバック効果の大きさを調べたが,平板の落下軌跡や回転数はほぼ同じ傾向を示した。このことから,自動回転運動している平板ではフィードバック効果は小さいことを明らかにした。
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