研究概要 |
本研究では,高速航空機用の空気吸込式エンジンに適用可能な,キャビティ流れの特性を利用したエアインテークを考案し,これの空力性能を取得した.高速航空機用エンジンに適用するエアインテークは,広い飛行速度に追従して効率よく作動することが要求されるため,非設計点飛行速度における性能低下が問題となる.性能低下の原因は,従来型の可変インテークが,空気圧縮率と流量捕獲率を独立に制御できないことにある.これらの独立制御を目的として,スパイク(中心体)を複数のブロックに分割し,ブロック間のキャビティ上に形成される剪断層をもって空力圧縮面に置き換えるインテーク方式を考案した.各ブロックの間隔を変えることによるスパイク伸長と,スパイク全体の前後移動を併用することで,空気圧縮率と流量捕獲率の独立制御が可能となる. 本インテーク方式に関する研究の第1段階として,キャビティ流れの基礎空力特性を調査する風洞試験を実施した.円錐面のキャビティは,その後流の境界層を肥厚化させ,圧力振動を誘起し,空力抵抗を増大させるといった悪影響を引き起こすが,キャビティの分割数を増やすほど,境界層の肥厚化,圧力振動レベル,空気抵抗を低減できることを示した.研究の第2段階として,従来型インテークのスパイクをキャビティ構造に置き換え,インテーク性能を取得した.キャビティを適切に配置すれば,設計点(スパイク全長を変化させない状態)において,従来塗インテークと同等の設計点性能を達成できること,さらに,スパイクを伸長することにより,インテークの非設計点性能を改善できることを明らかにした.風洞実験によって得られたインテークの作動特性を用いてターボジェットエンジンの性能計算を行った結果,新型インテークを有するエンジンは,従来型のインテークを用いたエンジンに比較して,エンジン推力の制御性において優位であることを示した.
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