研究概要 |
マイクロバブルと乱流構造との相互作用を解明するため,多数の上昇気泡を含む一様等方性乱流の直接数値計算をいかなる近似も用いずに行った.不純物を含む水中のマイクロバブルを想定して,気泡は低密度の球形固体粒子のようにふるまうと仮定した.昨年度に開発した計算法を用いて,最大1000個の気泡を乱流中に投入して計算を行い,気泡上昇速度,気泡および液相速度変動,気泡の空間分布,液相乱流エネルギーおよびエンストロフィーの変化,乱流渦構造の変化,伝熱特性の変化などについて調べた.比較のため,静止流体中の上昇気泡が誘起する擬似乱れに関する計算や,気泡の運動に質点近似を用いた計算もあわせて行った. 乱流中の平均気泡上昇速度は,静止流体中のそれに比べ低下することが質点近似を用いた計算により既に示されているが,直接数値計算により得られた気泡上昇速度はそれよりもさらに低下することがわかった.その原因として,乱流渦構造の影響の他に,気泡後流構造の変化があることを示唆する結果を得た.また,気泡上昇速度が乱流の速度変動と同程度のときには,気泡混入による乱流エネルギーの変化は小さいが,気泡上昇速度が乱流速度変動に比べ高い場合は,擬似乱れの乱流エネルギーと同程度の大幅な増加を示すことがわかった.さらに,鉛直方向,もしくは水平方向に一様な温度勾配がある場合の対流熱伝達について調べ,気泡の混入により,温度勾配が鉛直方向にある場合の対流熱伝達は増加するが,温度勾配が水平方向にある場合の熱伝達に関しては,乱流構造の変化に伴い減少する場合があることを見出した.
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