研究概要 |
前年度作製された音場で単一燃料液滴を自発点火させる実験装置を改良した.内径62.3mm,長さ500mmの両端開放円筒状の金属管の外周に電熱線を巻いたものを電気炉として用い,液滴を自発点火させるための高温雰囲気(空気)を達成している.その断熱性を向上させた.また,液滴をより詳細に観測できるように電気炉中心部に新たに観測窓を取り付けた.さらに,これまでのCCDカメラによる点火遅れ計測に加えて,液滴近傍の気相温度計測を行い,視認できる熱炎(火炎温度1500K以上)のみではなく発光をほとんど伴わず視認できない冷炎(火炎温度800K程度)の発生も検知できるようにした.冷炎の温度の雰囲気温度依存性が計測され,雰囲気温度の上昇とともに冷炎の温度は減少することが確認された.これは予混合気の自発点火において見られる現象とは逆である.原因としては液滴周囲の自然対流の影響が考えられる.電気炉の片端に設置したスピーカにより電気炉内に定在音波を発生させ,定在音波中の直径約1mmの正デカン液滴の自発点火を観測したところ,定在音波の節と腹で一方は点火遅れが長くなり他方は短くなる逆の影響が確認された.閉鎖空間内での単一燃料液滴の自発点火を完全非定常計算で模擬する数値計算モデルを用いて,定在音波の節(粒子速度変動の面で節,圧力変動の面では腹)における液滴点火を再現した.この結果,実験で使用された最高125dB程度の音圧レベルでは定在音波によって生じる圧力変動が点火遅れに及ぼす影響は小さいことが示された.音波が液滴の点火遅れに及ぼす影響は局所的な圧力の変動を介してよりも物質移動への影響を介していることが示される.
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