研究概要 |
温度差を有する固体壁面上におけるLennard-Jones液滴の移動に関する分子動力学法シミュレーションを行った.計算領域の大きさは30nm×8.5nm×6nmとし,下部にはfcc(111)面の固体壁面分子を配置,4側面は周期境界条件,上面は鏡面反射条件とした.この計算領域の中に2048個のアルゴン分子をいれて計算を行った.アルゴン-アルゴン間,およびアルゴン-壁面分子間の相互作用はLennard-Jonesポテンシャルで表し,壁面分子はバネマス分子とした.バネ定数,質量,分子間距離は白金の値を用いた.また壁面の温度制御にはLangevine法を用いた. まず系全体を100Kに速度スケーリング法で温度制御した後,Langevine法による壁面の温度制御のみで計算を続け,固体壁面上のアルゴン液滴の平衡状態を作成した.平衡状態に達した後,壁面に1.05K/nmの温度勾配をつけて計算を行った.その結果,壁面上のアルゴン液滴が高温側から低温側に向けて移動する様子が観察された.平均的な移動速度は1.51m/sであった.移動する液滴内部の速度分布を調べたところ,固体壁面近傍がもっとも横方向の速度を有しており,この部分が駆動力となっていることがわかった.また移動している液滴の接触角は平衡状態のものより小さくなることがわかった.なお,前進接触角,後退接触角の違いは観察されなかった.壁面のぬれ性を変えて計算を行った結果,ぬれにくい面ほど移動速度が大きくなる傾向が見られた.
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