研究概要 |
本研究では,測定条件に依存しない粘弾性係数として,生体表面の硬さをin-vivoで瞬時に測定する手法の確立を目指している.昨年度までに,生体表面に接触子を押しつけ,速度正帰還によって発生する自励振動で加振することで,生体表面の接触動剛性(ばね定数,粘性減衰係数)が瞬時に測定できることを示した(自励駆動法).また,自励駆動法で求めた動剛性から,押しつけ荷重や接触子の曲率半径などの測定条件に依存しない粘弾性係数を導出する手法を導出し,人肌に近い粘弾性を有する試験片を用いてその妥当性を示した. 本年度は,装置の小型化と,化粧水の塗布が人肌の粘弾性特性に与える影響のオンライン測定の実現を目指した。はじめに,測定装置の小型化を実現するため,速度をDC応答加速度センサ出力の積分から求めるように測定装置を改良した。これまで,レーザードップラー振動計を用いて加振部の振動速度を検出し,これをフィードバックすることで自励振動を発生させていた。しかしながら,この手法では地上に設置された速度センサから見た絶対速度を測定する必要があり,測定方向が限られる,あるいは装置の可搬性が劣るなどの問題があった。そこで,加振部に直接設置できる加速度計出力の積分から求めた速度を用いて制御を行った結果,速度波形に多少の揺らぎは見られるものの,周波数推定器による誤差低減効果により,接触動剛性の精度はレーザードップラー振動計を用いた場合とほぼ同精度となることを示した。また,人肌に化粧水を塗布し,粘弾性の時間変化をオンラインで測定した結果,化粧水によって粘弾性の変化に時間差があることや,水を塗布するよりも化粧水を塗布する方が粘弾性の急激な増加を引き起こすことなどを明らかにした。人肌の粘弾性をオンラインで測定する手法としての本手法の有用性を示した。
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