研究概要 |
本研究の目的は,外力を断続的に与えることで柔軟構造物に生じる大振幅の振動を制振させることである.柔軟構造物のモデルとして,座屈した板ばねを考える.座屈した板ばねの反力は変位の3乗に比例し,これに強制振動を与えた系をダフィング系と呼ぶ. 前年度では,板ばねを用いたダフィング系の実験装置を試作し,板ばねに断続外力を与えることで振動が抑制される現象があることを実験的に確認した.しかし,振動が抑制されるメカニズムについては不明であった.また,強制外力を偏心おもりをつけたモータで与えており,強制外力の振幅が一定でないという問題があった. 今年度は,前年度の問題を解消するために実験装置に加振器を用い,強制外力を正確な正弦波状にして実験を行った.今年度の装置においても前年度同様,振動が抑制される現象が生じた.周波数掃引実験を行ったところ,強制外力の周波数を増加させた場合と減少させた場合で系に生じる振動状態が変化する領域がある,すなわちヒステリシスが発生していることが確認された.更に,これまで確認されてきた断続外力による制振現象は,ヒステリシスのある周波数帯で発生していることが確認された.以上から,断続外力による制振効果のメカニズムは,「系の安定解が複数あるパラメータ領域において断続外力を与えることで,系の振動状態が振幅の大きな安定状態から振幅の小さな別の安定状態へとシフトするため」であることがわかった. ダフィング系と同様,柔軟構造物は一般に非線形系なのでヒステリシスが発生している可能性があり,本手法が有効であると考えられる.
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