研究課題
若手研究(B)
モータータンパク質の動きを観察するために、最も一般的な方法は、ビーズを付着させ、これを目印とすることである。変位の観察は容易であるが、回転の動きは、ビーズが対称形であるため、観察が困難である。そのような場合には、針状の構造を目印とすることが望まれる。そのような構造について、以下の条件が要求される。(1)数100万個ほどの針状構造を迅速かつ容易に製作する必要がある。(2)針の直径(100-200ナノメートル)と長さ(1-2マイクロメートル)は、加工精度が十分で、それぞれが均一でなければならない。(3)局所的にタンパク質を付着するため、付着面の材質の検討が必要となる。平成16年度の研究により、直径100nm〜200nm、長さ1〜2ミクロンの柱状構造の端部に金修飾を施した構造を提案した。この際パターニング材としてナノビーズを用い、ポリスチレンビーズをマスクとして用い金の加工を行い、引き続いてシリコンマイクロマシーニングを行い、超音波加工によって百万個以上の構造を一度に製作することができるようになった。前年度の研究では、得られた針を、分子モーターのF1に接着するところまでの成果が得られた。しかしながら、成功率は大変低いものであった。理由は柱の端部の金薄膜が機能化されていなかったため、F1に特異的に接着できずランダムにそこかしこに付着する結果となっていた。本年度は端部金薄膜の機能化に取り組み、金→自己組織化単分子膜(Self Assembled Monolayer)→ビオチン(Biotin)→ストレプタビジン(Streptavidin)修飾をおこなった。分子修飾は超音波リリースの前に行った。また、分子修飾の前に真空アニールプロセスをはさみ、金とシリコンの密着性を改善した。このことにより、F1モーターへの針の付着確率を50%にまで大きく高め、モーターの回転運動の観察に成功した。収率が向上したことを受け、引き続き、ストレプタビジンが端部の金にのみ選択的に付着し、シリコンに付着していないことを確認した後、針を直線運動型のKIF1Aモーターに付着させて分子モーターの動作の可視化を行う予定である。
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