研究概要 |
本研究の目的は,効果的な歩行トルクとしての股関節トルクを用いた受動的歩行に基づくダイナミクスベースト歩行手法を開発し,シミュレーションおよび実験によりその有効性を検証することにある. 今年度は,昨年度試作した実験装置Prototype Biped Emu-IV(PBEmu-IV)を用いていくつかのダイナミクスベーストに2足歩行を行った.これらの歩行は股関節が自由関節として運動するように支持脚側のモータを用いて胴体を一定姿勢に固定し受動的歩行を初めとする股関節トルクを用いない従来研究に基づく歩行手法である.我々は股関節トルクをどのように印可することが歩行にとって有効であるか調べるために比較的簡単にダイナミクスベースト2足歩行実現できるこれらの手法を導入した.しかし,実験による詳細な歩行データは存在しない. 実験は,まず,両膝へsin波状の強制振動を与えることで2足歩行を実現した.得られた歩行は膝振動を入力,歩行角振動数を出力と見なすことで一種の周波数応答と捉えることができる.この考えに基づき,詳細なデータを解析した結果,膝入力の角振動数が歩行角振動数を決定すること,脚の固有振動数近辺で歩行が成立し,膝の角振動数によって歩行の振幅である歩幅が変化し,ある特定の振動数のゲインが高いことなどを確認した.これらの結果は,周波数領域でのロボットの歩行特性を定性的に評価できることを意味しており,従来,安定性のみが議論されていた歩行の評価方法に新たな観点を加えることができたと言える. さらに,従来研究で数値シミュレーションのみその実現性が示されていた遊脚の膝振動のみを用いた歩行にも成功した.また,この実験装置が緩斜面上で受動歩行を行うことも確認し,胴体の姿勢をPD制御により拘束することで受動歩行を含めたダイナミクスベースト2足歩行が実現された. 今後,これらの知見を元に股関節トルクを用いてダイナミクスベースト歩行を実現する.
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