研究概要 |
近年,家庭用の電磁調理器が多く普及するようになった。電磁調理器の稼動時には,加熱のために主に100kHzまでの中間周波磁界が発生する。このとき,ヒトは電磁調理器の前に立っている場合が多いことから,ヒトは磁界に暴露されることになる。 本研究では,解剖学的に詳細な人体数値モデルを用いて,中間周波磁界によるモデル内誘導電流の解析を行っており,ここでは磁界源として電磁調理器に着目し,暴露評価を行った。 まず,磁界環境の実態調査を行うために,稼動時の磁界測定を行った。磁界強度は,使用する鍋のサイズや材質により異なるが,本測定では電磁調理器台のエッジ部において最大2μT程度になり,磁界源からの距離の3乗に反比例することが分かった。 次に,成人男性の人体数値モデルを用いた誘導電流の解析を行った。その結果,磁界源に近い腹部において誘導電流は大きくなり,人体数値モデルがエッジ部に接触した場合における誘導電流の最大値は5mA/m^2程度となった。また,モデル内誘導電流は,モデルがエッジから離れるに従い小さくなり,20cm離れた時に2分の1にまで減少した。 また,成人男性の数値モデル以外にも女性や小児モデルの場合でも,同様にモデル内誘導電流の解析を行った。頭部内の脳などの神経系組織に着目すると,小児モデルの頭部が成人モデルの頭部よりも磁界源に近いために,小児モデルの神経系組織における誘導電流が成人モデルのそれよりも最大で約7倍大きいことが分かった。 しかし,本研究で用いた電磁調理器や人体モデルによる解析結果では,ICNIRPで規定されている基本制限を越えることはなかった。
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