半導体中に不純物として添加された希土類元素は、環境温度の変化に対して安定で半値幅が小さい発光を示すという特徴を持つ。Al_xGa_<1-x>N中にEuをイオン注入した場合、Euの4f殻内遷移に起因した621nmの可視発光を示し、Al気相組成0.4で発光強度が最大となる。本研究では、Al_xGa_<1-x>N中にイオン注入されたEu原子周辺局所構造を蛍光EXAFS法を用いて解析し、CL強度との関係を調べた。 試料は、MOVPE法を用いてサファイア(0001)基板上にGaNバッファ層を介して成長されたAl_xGa_<1-x>N層(x=0〜0.75)にEuを加速電圧200keV、ドーズ量1×10^<15>cm^<-2>でイオン注入することにより作製した。注入後、1050℃で30分間のアニールを施した。測定は高エネルギー加速器研究機構放射光研究施設のBL9Aおよび12Cにおいて、Eu L_<III>吸収端に対して行った。また、発光特性の評価にはCL測定を用いた。 蛍光EXAFS測定の結果、Euは基本的にはGaサイトを置換しているものの、Gaサイトからずれており、発光効率の高い試料ほどそのずれは大きくなっていることが明らかとなった。このずれがEu周辺の結晶場を非対称にしていること、Alが加わるに従い、この結晶場の非対称性がさらにくずれること、これがAl組成によってCL発光強度が変化することを結論するに至った。
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