研究概要 |
本研究では,各種場面で用いられている電磁波方式の磁気およびICカードにおけるワイヤレススキミング等の情報漏洩への対策として,空中での減衰が大きいことを利用した超音波によるICカードシステムの提案をしている.昨年度までの研究成果として,試作機を製作し,カードリーダ・ライターカード問を想定した情報伝送実験において,双方向で最大115.2kbps(最大伝送距離0.5mm)の情報伝送速度を得た. 本年度は,実用化に向けた試作機の再構築を行い,ICカード側コンピュータのマイコン化と搭載電源の独立化を図った.ICカード用のマイコンとして比較的取り扱いが容易なPICマイコン(PIC16F84A)を用い,カードからリーダ・ライタへ向けた情報伝送を行ったところ,これまでと同様の115.2kbpsでの伝送に成功した,(なお,カードとリーダ・ライタは密着状態.>また,そのときのカード側電源はDC2Vに抑えることができ,現在普及している電磁波方式のICカードと同程度の電源による情報伝送が実現できた.さらに,カードケース等に挿入した状態を想定し,カードとリーダ・ライタ問にアクリル板を挟んで伝送を行ったところ,1mmでは密着時と同様の2V,2mmでは3V,3mmでは4Vの電源で伝送に成功した.以上の結果より,超音波ICカードは電磁波方式と同等の電源容量で100kbps程度の情報伝送速度を達成し,本研究において実用化における電源・伝送速度の要件はほぼ満たすことができた.なお,本年度予定していたシステム全体の数式モデルの導出については確定的なモデルの導出には至らなかったため,引き続き検討が必要である。 今後は,カード側にマイコンを搭載した本試作機を改良し,リーダ・ライタからカードへの情報伝送を行い,諸特性を測定することで,超音波ICカードの使用用途とユーザビリティについて検討する予定である.
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