研究概要 |
近距離での高速無線通信技術として超広帯域(Ultra Wideband : UWB)無線通信方式が注目されている.UWB信号は3.1〜10.6GHzの周波数帯に500MHz以上の帯域を持つ信号であるため,既存システムとの干渉が問題となっている.そこで,IEEE802.11aの無線LANとの相互干渉について検討を行った. UWB送信信号をウェーブレット解析により複数のサブキャリアに分割し,マルチキャリアテンプレートを作成した.このテンプレート波形は従来使われているシングルキャリアテンプレート波形とスペクトルが近似するように重み付けして構成した.5GHz帯無線LANの干渉波と周波数が重なるサブキャリアを3本程度削除することにより,干渉の影響を約30dB低減できることが明らかとなった.また,無線LANのスペクトルの逆特性を周波数領域で掛け合わせる,ノッチ形成テンプレート方式,および,周波数領域において相関処理を行う,周波数領域相関処理方式についても検討を行った.その結果,無線LANの干渉が存在する環境において,一定の通信品質を得るために必要なEb/NOを1dB以下に抑圧するために許容できる干渉量は,D/U比にして,マルチキャリアテンプレート方式は30dB,ノッチ形成テンプレート方式は10dB,周波数領域相関処理方式は20dBであることが分かった. さらに,UWB-IRをもとにして周波数帯域幅,伝送速度を同じ条件とした場合の陪直交符号化UWBの伝送特性について検討した.その結果,符号化利得によりBER特性の向上を図れることを示し,デュアルサイクルパルス化した送信信号を用いることでD/U比が-10dBまではほとんど通信品質を劣化させることなく伝送できることがわかった.すなわち,周波数ノッチ形成により無線LANとの干渉の影響をさらに低減できることが明らかとなった.
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