研究概要 |
近年,建材や壁紙,それらに使われる接着剤等から発生する有害な化学物質による室内空気汚染が深刻な問題となっている.本研究は,室内汚染を植物の持つ空気浄化作用を用いて改善するシステムの開発を目的としている.前年度の研究において,数種類の植物を対象として空気汚染浄化能力の違いを検討するとともに,植物生体内の浄化メカニズムの解明を目的として生体電位測定およびその信号解析を試み,生体電位の直流応答および交流応答特性が汚染ガスによって変化する様子を捉えた.また,植物の浄化能力が光条件によって変化する様子を捉えたことから,光の種類(波長)の違いが,浄化能力に影響を与えるものと推察された. そこで本年度は,光が浄化能力並びに生体電位反応に及ぼす影響を検討するため,LEDを光源として4種類の波長を照射可能なLED照明ユニットを購入し,これを用いた実験を行った.また,より植物の生体内での反応を詳細に検討するため,前年度に購入した細胞電位測定システムを用いて生体電位反応を測定した. その結果,植物細胞電位は光の波長の違いによって異なる反応を示し,植物の持つ敏感な光応答特性が捉えられ,交流成分反応の時系列解析から,カオス特性にも特徴の違いが観測される可能性が示唆された.これらの結果から,植物の生体電位によって植物の空気汚染浄化能力を評価でき,この反応を空気汚染浄化システムへと利用できる可能性が示唆されるとともに,光の波長をコントロールすることで,植物の空気汚染浄化能力をさらに向上できるものと考えられる.さらに,植物細胞の電位測定が可能となったことから,植物体内の情報伝達機構や光合成などの生理現象解明の手法としても有用なシステムとなりうるといえる.
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