研究概要 |
複数企業を対象としたサプライチェーンでは,企業間の協力による競争力を維持するため,できる限り情報公開を行わずに限られた情報のみを利用して各企業の要求を満たす計画を作成することが求められる.本研究は複数企業間におけるサプライチェーンを最適化するための方法論と最適化システムの開発に関する研究であり,その研究実績および得られた知見は下記のとおりである. 1.複数企業を対象としたサプライチェーン計画問題をモデル化し,分散環境下で全体を最適化することのできる分散協調型最適化システムを開発した.開発したシステムに採用した最適化手法として,利用可能な情報が制限される条件下においても,全体の最適性を維持することのできる拡張ラグランジュ分解調整法のアルゴリズムを構築した. 2.アルゴリズムの性能を決定する要因として,パラメータの影響や解の初期値依存性がある.本研究では,開発したアルゴリズムに対して,パラメータの変更によるアルゴリズムの性能評価,および有効な初期値の計算法について検討し,アルゴリズムの性能向上を行った. 3.開発したアルゴリズムを1機械スケジューリング問題,複数企業間取引計画問題に適用し,汎用数理計画ソルバーとの性能比較を行った.その結果,様々な例題に対して,開発したアルゴリズムは最適解からのずれが1%〜3%という極めて優れた最適性を有する解を数十秒という実用的な時間で計算可能であることを示した. 4.開発したシステムを多工程アルミ圧延工程のスケジューリング問題や原料ヤードにおける配置搬送の同時最適化問題へ応用し,開発したシステムは,実用規模の問題に対して,従来の計画法に比べて最適性の優れた解を導出できることを示した.
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