研究概要 |
本年度は,前年度に構築した52CPUからなるBeowulfクラスタ計算機システムを用いて,双線形行列不等式(BMI : Bilinear Matrix Inequalities)解法の検討と種々の数値実験を行い,以下の結果を得た. 1.分枝限定法において,BMIの特性を援用して問題構造に関する複雑度数(Complicating Number)を考慮した新たな分枝選択法を提案し,静的出力フィードバックによるヘリコプター姿勢安定化問題等における実際の制御系設計問題において,その有用性を明らかにした. 2.計算粒度を先行研究のように固定ではなく可変とすることで,大きな計算粒度と高頻度の上界値更新の両立を可能とするアルゴリズムを提案した.また,可変計算粒度の上限値を定めるパラメータの最適化を行い,48CPUの計算機実験において43倍の計算加速度(並列化効率89.5%),24CPUにおいては23.3倍の計算加速度(並列化効率97.2%)を達成した. 3.実効性の高い制御系設計問題の一つである低次元H∞補償器設計問題(30変数)について,従来より提案されているBMI解法である交互射影法よりも,優れたH∞ノルム性能を達成する補償器が設計可能であることを示した. 4.正規分布交叉(UNDX : Unimodal Normal Crossover)による実数値GAによる並列化BMI解法の研究を行い,MPIライブラリ,GNUコンパイラ,LinuxプラットフォームによるBeowulfクラスタ環境で稼動するプログラム実装を構築した.また,当研究グループで従来提案していたBMI緩和問題の最適解から主探索直線を選択する最適化手法についても,Beowulfクラスタ環境で実装した. Beowulfクラスタ計算機環境をプラットフォームとすることで,低次元補償器設計については実用的なBMI問題が解けるようになってきたが,まだ確立されるところまでは達成されておらず,今後ともBMIオリエンテッドなアルゴリズムの研究,およびCADソフトウエアの開発が必要である.
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