研究概要 |
本研究は人間-機械系の一種であるビークルが優れた操縦性を達成するための性能基準および支援制御系の設計手法について,機械・制御系統合化設計の観点から明らかにすることを目的とする.ビークルの操縦操作は移動経路(道路形状など)を目標値としたサーボ制御と見なせ,ビークルは制御対象に,操縦者はフィードバック制御器に対応する.自動制御系の統合化設計に関する結果では制御対象の位相特性が,達成可能なH2サーボ性能の上限に支配的であることが指摘されているため,本研究では同様な観点からビークルの操舵応答の位相特性が操縦性(人間-機械フィードバック系の閉ループ制御性能)に支配的であると予想した.そこでNealら(Neal and Smith, J. Aircraft, 1971)の実験に基づき,航空機の操舵入力に対するピッチ角応答の位相特性と操縦性の関係についてPilot Rating(パイロットコメントに基づく客観的評価基準)およびH2最適サーボ性能に基づき達成可能な操縦性を解析した結果,予想通り操舵応答の位相交差帯域が十分広ければ両者の性能基準の意味で人間-機械フィードバック系の操縦性が準最適化され,かつ準最適化される帯域もほぼ一致することが観測された(16年度成果1).また自動車のレーンチェンジ運動の解析からも類似の結果が観測された(16年度成果2).以上の結果より,人間-機械系の性能基準として機械系の位相交差周波数が有用であることと,特定の人間モデルに依存しない支援制御系設計基準の存在が示唆された.つぎに支援制御系の設計手法として有限帯域位相整形を達成するフィードバック制御器の設計手法を新たに提案し,飛行制御系設計への応用を示した(雑誌論文1,2).提案手法は有限帯域モデルマッチングの発想に基づき,設計問題はLMIに帰着されるため容易に求解可能な点が特徴である.以上の結果により研究課題の一応の達成をみたが,今後も実機実験やロバスト安定性評価など更なる研究の発展が見込まれる.
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