研究概要 |
本年度は,前年度の研究により明らかになった,移流条件下でのセメント改良土の溶脱特性に着目した検討を行い,機構の解明とモデル化,数値解析による定量評価を実現した. まず,実験によるメカニズムの分析を行った.円筒形状に作製したセメント改良土供試体に様々な動水勾配を与えて溶脱カルシウム量を測定する実験を行った.時系列で下流からの排出される溶液のカルシウム濃度変化を分析した結果,動水勾配が大きくなるほど早い段階で溶液のカルシウムの濃度が低下することが明らかになった.また,解析結果との比較から,準平衡条件を前提として固液平衡関係を採用した解析により求めた値よりもはるかに早い段階での濃度低下であることが分かった.これらの分析及び感度解析結果から,セメント改良土では,空隙寸法が大きいために,内部空隙中のカルシウム濃度が均一になるまでに時間がかかり,平衡モデルを直接には適用できないとの考えにいたった.すなわち,動水勾配などの外部条件や,最大空隙径といった供試体の材料的な特性によって,巨視的な平衡関係が変化するといえる. 以上のことから,セメント改良土へも適用可能な時間依存型のカルシウム溶脱モデルの開発を行った.セメント改良土のように粗大な空隙中でのカルシウムイオン濃度の不均一性を考慮し,見かけ上,平衡曲線へ到達するまでに時間がかかり,徐々に濃度が低下して平衡関係に収束するものとした.収束速度は,時間,空隙径,濃度差の関数として与えることで空隙構造等の影響を直接的に評価すると共に,移流などの外部要因の影響も間接的に考慮することが可能になった.実験結果との比較から,動水勾配や空隙構造の影響を良好に再現できることが明らかになった.
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