研究概要 |
近頃における水の高機能化は、半導体産業や電子産業分野に限らず、建設分野、とりわけコンクリート工学の分野において大きな成果を発揮する可能性がある。そこで、本研究は、モルタル,コンクリートの練混ぜ水に機能水を用いることで,ワーカビリティーの改善や強度の発現性を高められるか否かに着目し,モルタル,コンクリートの諸性状について通常の水道水を用いた場合との比較・検討を行った.その結果、機能水のひとつであるろ過処理水を用いた場合に、モルタルにおいて通常の水道水を用いた場合に比べ、強度の増進が確認された。このときのモルタルのフレッシュ性状に大きな変化はなく、施工面からは水道水と同様に扱うことが可能であると確認できた。さらに、モルタルにおいて、通常の水道水を用いた場合に比べ強度増進が確認された3種の機能水を用いてコンクリートを作製した。その結果、通常の水道水を用いた場合と比べて、初期や早期での強度発現性が低く、中でも曲げ強度の増加が確認できなかった。これは、機能水を用いることで若干流動性が増し、これがブリーディングにつながり骨材-モルタル界面での付着力の低下を引き起こしたためと考えている。さらに、各材齢時のコンクリートのモルタル部を対象に、成分分析を行った。分析対象とした成分はAl_2O_3,SiO_2,Fe_2O_3の酸化物とし、モルタル中に含まれる質量含有率を調査した。その結果、材齢の進行に伴いAl_2O_3,SiO_2,Fe_2O_3の酸化物の質量含有率が徐々に増加しているものが、長期にわたり安定して強度増進していることがわかった。これより、コンクリート中の全セメントを長期に渡り安定して反応させていくことがコンクリートの長期強度発現には必要不可欠であることがわかり、その反応を水の高機能化により得られる可能性を示唆した。 現在、投稿に向け、準備中である。
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