研究概要 |
平成17年度は,平成16年度の検討結果を踏まえて,Kinematic相互作用である入力損失効果がInertial相互作用に及ぼす影響を把握することを目的としている。研究概要として,入力損失効果が橋梁・高架橋の動的応答に及ぼす影響程度の評価結果を以下に示す。対象構造物については兵庫県南部地震で実被害にあった橋梁基礎構造物を対象としている。昨年度実施した入力損失効果の定量的評価に対比して,更に互層地盤の影響や橋脚の根入れ部などの影響を考慮している。入力損失効果を含めた基礎入力動については,3次元有限要素法による基礎-地盤系モデルを使用して逐次動的解析と周波数応答解析を行い算定している。基盤入力地震動は,神戸ポートアイランドで観測された基盤地震動(G.L-83m)を仮定した。その結果,入力損失係数は低振動数領域においてはほぼ1を取り,高振動数領域において50%以上の入力低減効果が確認された。次に非線形性を有する構造物(慣性系)に及ぼす入力損失効果の影響を評価するために,上記有効入力地震動と,自由地盤の地表面で同手法により得られた地震動を,それぞれ1自由度系に置換した非線形モデルに入力してその応答特性の違いを評価した。本解析では,構造物の非線形特性として,最大点指向型のCloughモデルを履歴則として採用した。当該モデルはコンクリート構造物の非線形特性を模擬することが可能である。また,構造物の降伏前の固有振動数と降伏強度(降伏震度)をパラメータに,多くの非線形構造物について検討を行った。その結果,標準的な大型基礎構造物の固有振動数を0.3秒近傍,そしてその降伏震度を0.2と仮定すれば,入力損失効果を考慮した場合,考慮しない場合に対比して応答塑性率が1割程度低下することが判明した。つまり,入力損失効果によって構造物の被害が軽減された可能性のあることを示唆している。
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