研究概要 |
コンクリート構造を対象とした維持・管理や,解析手法の検証を目的として,ひび割れの客観的・定量的な評価が望まれている.本研究では,コンクリート構造の表面を撮影した画像からひび割れを抽出し,その特徴量を把握するための汎用的な画像処理手法の構築を目的とした. 具体的には,遺伝的プログラミングを応用し,並列型画像フィルタを自動生成するシステムを構築した.ひび割れを検出するための画像フィルタを作成するにあたっては,評価関数,世代交代モデル,個体数,世代数,交叉方法などの設定を様々にチューニングし,一般的なコンクリートの表面画像に対して明瞭なひび割れを抽出する複合画像フィルタを生成することに成功した. 次に,フィルタ処理後の画像におけるノイズを既に抽出されているひび割れ部分の情報を用いて除去し,さらにひび割れ端部から不明瞭なひび割れを追跡する手法を構築した.特にひび割れの追跡処理では,端部点でのひび割れ幅の情報および端部点とその近傍との輝度差を用いており,画像の解像度や照明条件の変化に対してロバストな手法である.本手法により,今回対象とした10枚のコンクリート画像については,最低でも9割程度のひび割れを抽出できることがわかった. 最後に,抽出したひび割れ画像から,その幅や方向を算出する手法を構築した.幅の算出では,ひび割れ直角方向の輝度値をSpline関数で補間し,その空間導関数が最大となる位置を,幅方向の端点とみなしている.方向の算出では,ひび割れの中心線を算出し,座標をSpline関数で補間し,その導関数から求めている.提案した手法により算出したひび割れの幅と,実際のひび割れ幅をクラックスケールにより測定した値とを比較したところ,誤差が数%程度であることがわかった. 以上のように,本研究では,コンクリートのひび割れを検出し,その特徴量を把握するための汎用性の高い画像処理手法を構築することに成功した.今後は,実務・現場への応用を想定し,本手法のシステム化を行うつもりである.
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