研究概要 |
昨今,変形能力が高い(降伏比を小さく抑えた)アンカーボルトを用いた露出柱脚の設計が推奨されているのは,露出柱脚形式では柱より耐力が大きくなるように設計することが困難なことが一因である.柱脚の耐力を大きくするためには,高強度鋼材をアンカーボルトに用いればよいが,そのような柱脚の破壊性状の調査と適した設計法の検討を行った. まず,高強度鋼材をアンカーボルトに使用した柱脚の無軸力下漸増繰返し水平力載荷実験を行った.アンカーボルトには,降伏強度が1000N/mm^2級のPC鋼棒(JIS G 3109 C種1号)と700N/mm^2級のUSD685の異形鉄筋を用いた.実験の結果,以下の結論を得た. ・現行の設計法に従い,径の20倍程度の埋め込み長さをもうける場合,弾性限回転角は0.02rad.である. ・PC鋼棒アンカーボルトは降伏比が0.94と極めて大きいが,PC鋼棒をアンカーボルトに用いた柱脚は大きな変形能力をもち,その破壊性状はのび能力の高いアンカーボルト柱脚と同じである.また,柱下端が塑性化する場合の挙動と比べても遜色ない. 最大地動速度50kine(レベル2)および100kineの地震波3波を用いて地震応答解析を行った.解析モデルは,実験結果に基づき作成した柱脚要素をもつ3層鉄骨フレームである.地震によって建物に生じる変形および柱脚に求められる変形能力(回転量)を調べた.その結果,以下の結論を得た. ・柱脚の履歴性状の違いは上部構造の地震応答性状にほとんど影響しない. ・一般的な,すなわち,降伏強度が小さく,したがって弾性限回転角が小さい露出柱脚と比較して回転剛性が1/3程度の露出柱脚は100kineの大地震に対しても弾性を維持する.
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