研究概要 |
1.セミアクティブ制御則の検討 粒子径の異なる強磁性粒子を混合分散させた新たな磁気粘性流体(MR流体)を作動油に用いたシリンダー型粘性ダンパーを用いた場合に有効な制御則を数値解析的に検討した。本研究では,振動制御対象構造物のエネルギー応答に着目した制御則を発展させて,セミアクティブ制御を,ダンパーを含む制振構造物全体の履歴制御と位置づけて検討を行った。検討の結果,制御対象物の固有周期と外乱の振動周期によって制御効果が異なることが分かり,地震動を外乱として考えた場合,低層建物のように,外乱の卓越周期よりも比較的短い固有周期の場合,ダンパー応力とダンパー変位の関係が第1,3象限にある時にダンパーに最大限の減衰力を発揮させ,第2,4象限にある時には振動エネルギー量に比例した減衰力を発揮させ,また高層建物や免震構造物のように比較的長周期の建物に対しては,第2,4象限で減衰力を最大限に,第1,3象限で振動エネルギー量に比例した減衰力を発揮させると効果的であることが分かった。 2.5kN級MRダンパーの振動実験 解析的検討を踏まえて,最大減衰力5kN級のMRダンパーを試作し,1層鉄骨フレーム試験体を対象に振動制御実験を行った。MRダンパーは,これまでの単筒式片ロッドシリンダダンパーから両ロッド型に変更し,またMR流体の励磁についてもシリンダー全体をソレノイドコイル内に設置するものから,励磁流路を別途設けるバイパス式MRダンパーに変更した。制御器を構成するセンサーにはレーザ変位計を,DSPボードには分解能12bitのAD/DAボードを,供給電源には750VAのバイポーラ電源を使用した。制御は0.01秒刻みで行った。その結果,流体の反応時間を含む制御全体の時間遅れは,0.06秒(フレーム固有周期は,0.6秒)であったが,時間遅れが制御に及ぼす影響は概ね見られなかった。また,本制御器によって意図した通りの履歴制御が可能であることが分かった。
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