研究概要 |
本研究は,周産期医療施設の計画指針を実証的な知見を基に再構築することを目的としている.本年度は,昨年度の研究成果を受け,以下の3点について具体的な検討を行った. 1、周産期医療施設ネットワーク体制および稼働実態の分析 母子保健統計や都道府県の統計資料をもとに,各都道府県の周産期医療施設および周産期医療ネットワークの概況を整理した.次に,周産期医療ネットワーク参加施設の中で稼働実績に関する統計資料を収集できた8県を対象とし,周産期医療施設への新生児搬送件数・母体搬送件数の定量的な分析を行い,患者搬送件数からみた特徴を整理した.さらに,患者搬送元の医療圏域を判別可能な3県について,患者搬送経路についての分析を行った.これらの結果をもとに,周産期医療施設の施設機能・配置計画に関する課題を提示した. 2、周産期医療ネットワークの現状分析 総合周産期母子医療センターおよび地域周産期母子医療センターに指定されている施設への訪問調査を行い,周産期医療ネットワークにおける施設間連携,運営状況の実態,課題等を抽出し,今後の施設整備に関する知見を整理した. 3、新生児集中治療病棟(NICU)における発達支援・母子交流の現状分析 NICUにおけるディベロップメンタルケア(DC)とカンガルーケア(KC)の実施状況・施設整備状況を把握するため,全国321の医療施設へのアンケート調査を実施した.77施設(総合19,地域46,他19)からの回答を得た.(回収率24%)その結果,施設・設備を必要としないDCは約9割の施設で実施されている一方,施設・設備を必要とするDCを取り入れている施設は半数以下であることが明らかになった.また,KCについて先駆的な活動を行っているS大学病院のNICUにおいて,非参与型観察調査を行い,KCの実施状況と母子交流の実態を把握し,今後の母子交流・KCのための施設計画上の留意点を整理した.
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